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クリニック設計の建築基準法とバリアフリー法について

建築基準法では、医療施設などは特殊建築物に該当し、建築について厳しい基準が設けられています。病床の有無や規模により規定が異なりますが、大まかに知っておくべき基準についてご紹介します。

Contents
1.クリニックにおける建築基準
①診療所の構造
②診察室
③調剤場所
2.その他遵守すべき法令
①バリアフリー
②消防法に関連する建て方
③都市条例(まちづくり条例)
④定期報告

 

1.クリニックにおける建築基準

クリニックなど、不特定多数の人が利用する施設では、主に火災などの緊急事態における安全の確保、衛生管理など、数多くの遵守事項があります。

医療施設は、病床の数により、病院、診療所(クリニック、医院)のいずれかに区分されます。
入院用の病床数が19以上は病院、19以下の場合は診療所。病床がゼロであれば診療所に区分けされますが、建物の区分は特殊建築物ではなく、一般建築物とみなされます。

区分 病院 診療所 診療所
病床数(入院用) 20以上 1から19 ゼロ
建物の種類 特殊建築物 特殊建築物 一般建築物

クリニックは、開業届けを申請すれば、開業することは可能ですが、建物建築には諸法令が絡み合い、複雑です。実際にクリニック(診療所)を建てる際の主な規定を以下に紹介します。

 ①診療所の構造

・戸建ての場合、他施設と物理面、機能面において明確に区画されていること
・テナントの場合、診療所となる場所が廊下などと明確に区画され、天井まで仕切りがあること
・待合室、廊下、診察室はそれぞれ独立していること
・待合室の広さは3.3㎡以上確保すること

 ②診察室

・診察室の広さは9.9㎡以上確保すること
・診察室と処置室を兼ねる場合、カーテンなどで区画できること
・医師1人に対し、1室設けることが望ましい
・1部屋で1診療科であることが望ましい
・給水設備の整備が望ましい

 ③調剤場所

・待合室と調剤所の間には、天井まで仕切りがあること
・採光、換気を十分にし、かつ清潔を保つ
・冷暗所(又は電気冷蔵庫)を設置する
・感量10ミリグラムのてんびんおよび500ミリグラムの上皿てんびん、その他調剤に必要な器具を備える

 

2.その他遵守すべき法令

その他、医療法において診療科目ごとに定められた基準があり、導入する医療機器、設備にも規定があります。

①バリアフリー法

建物を新築・改修する場合、2006年に施行されたバリアフリー法に基づく設計が義務づけられています。
車いすなどが通ることのできる廊下幅の確保、スロープ設置のほか、段差の解消などがあります。
段差解消は、バリアフリー法によって定められている規定の一つです。

②消防法

クリニックは不特定多数の方が利用される場所です。火災を起こさないことが大前提ですが、万が一の場合の対応も必要です。
まず非常警報、誘導灯や防炎加工は必須です。
そのほか、床面積に応じた消化器具の設置、自動火災報知器設備などの規定もあります。建物の規模や就業人数に応じた避難器具の設置規定があります。

③都市条例(まちづくり条例)

建築基準法やバリアフリー法、消防法は全国一律の規制ですが、都市条例は自治体ごとでまちまちなので事前の確認が必須となります。

④定期報告

定期報告は、不特定多数多数の人が利用する建物と防火設備の安全性を確認し、行政に報告する制度です。
報告義務は建物所有者に課されますが、検査、報告書作成については一級建築士などの専門家に依頼する必要があります。
ただし、定期報告は病院と有床診療所に課される義務です。無床診療所では、施設基準を満たしているかどうか自己点検による報告義務となっています。

クリニックの開業を目指される場合、医療人としてのみならず、経営者・院長として建物の建築や運営の責任も負うことになります。専門家の知恵も借りながら、法令や条例に則った、理想の建物づくりに注力しましょう。

 

クリニックから住宅まで。想像を超える、創造的な空間デザインを、お客様とともに。
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